軍曹。
昔、私が日之出屋へ入社したての頃、魚屋さんの配属だった。
そこへちょこちょこ買い物に来られる愛すべきおとうさんがいらっしゃった。
「おいっ、息子!ちょっと来い!あのな、商売ちゅうのはやな・・・」
なんて、新人の私へ熱烈指導をしてくださり、本当にかわいがってくれた。
山本さんというお名前から「山本五十六さん」が連想され、
親しみの意味を込めて「あっ、軍曹来られた・・・」ってな関係だった。
ただ、入院されてからというもの店へ足を運べなくなり、
毎回のように「おいっ、息子!」なんて呼ばれてたもんだから
どこか一抹の寂しさを感じていたのだ。
そして、時は流れ、無情にも「軍曹」のことは頭の引き出しの奥の方に・・・。
で、先日、ある勉強会の親睦会の中で
「昔、うちのおじいちゃんが日之出屋へしょっちゅう行ってたわ!」ってな話に。
「あっ、そうですの。ありがとうございます!」
「なんかめちゃくちゃ高いカニを買うてきてたで」
「んっ?めっちゃ高いカニ?」
めっちゃ高いカニといえば、初セリにかけられた祝儀相場の松葉ガニのこと。
その時だ、引き出しの奥の方にしまっていた「軍曹」のことを思い出す。
「昔ね、お客様に”軍曹”って方がいらっしゃってね。
まあ、僕がそう呼ばせてもうててね。それが、また粋な方でして、はい。
毎年毎年、松葉ガニを購入されてたんですけど、入院されたんですわ。
でもね、入院先から、”今からカニ買いに行くぞ!”いうて電話してこられて
なんでも”ワシの分を勘定にいれてるから、行けへんかったら困るやろ!”
と、周囲の制止を振り切って・・・。ほんまに世話なってたんですわ」とお話する。
「んっ?それ、いつの話や?3.4年ほど前か?」
「え~っと・・・、忘れましたけど。あっ、他にもアンコウとか好きで・・・」
「アンコウって・・・、あれっ?うちのおじいちゃんちゃうか?山本って名前・・・」
「うそっ!!はい、山本さんですわ!」
「間違いないわ!軍曹って、うちのおじいちゃんやんけ!わはは・・・」
「マジか・・・。んなことってあんねんな・・・。で、あの~、その~、今は・・・」
「んっ?おー、おー!!元気や、元気!まだ大丈夫や!」
もうね、なんちゅうの、スゲーうれしいのね。ええ酒飲めた~である。
次の日、うちのスタッフにその旨を伝えると、「マジで!」と皆大喜び。
振り返ると、目の前のたったひとりのお客様としっかり向き合うことを
指導してくださったような気がしてならない・・・。
これからは、必然としか思えないご縁をいただいた
お孫さんから学ばせていただきたいと思います。
いや~、しかし、お元気でなにより。ええ気分やわ~・・・である。
※なんか気になって過去のブログを調べてみたら、
やっぱり2008年11月8日「軍曹。」つってブログに綴ってた。
こん時のブログは、なぜか文字化けしている・・・。