秋刀魚の刺身(前編)。
値段的にも脂ののり具合からしても、”秋刀魚”がいよいよ旬を迎える。
当店で取り扱う厚岸から飛行機でやってくる秋刀魚は
鮮度もよくて刺身なんかで食べるのが、また格別。
北海道の人から教わったのだが、
地元では一味醤油でいただくのだという。
さて、この食べ方だが、私には…、いや…、
我々夫婦にとっては、かけがえのない食べ方なのだ。
現在、2人の息子に恵まれたのも
「秋刀魚は一味醤油で…」のおかげといっても過言ではない。
それは、そう、さかのぼること2001年9月23日。
結婚式を終え、海外へ新婚旅行に向かう予定だったのだが、
あのたくさんの命を奪った「アメリカ同時多発テロ事件」が…11日に…。
そんな状況だったので、旅行そのものをキャンセルしようかと。
しかし、「落ち着いてから、行きますねん!」と言って
何ヵ月後に新婚旅行に行った人の話を聞いたことがない。
「アカン!ここは行っとかんとアカン!この先連休はまず無い!」
で、妻と相談したところ、選ばれたのが”北海道”。
慌てて行きの切符と「るるぶ」だけを購入し、関西空港へ。
到着したものの、頼れるのは「るるぶ」一冊だけ。
おおさっぱな私は、行き当たりバッタリのるるぶ旅行を進めていくのだが、
几帳面な彼女なので3日目あたりからどことなく嫌気がさしてくる。
で、事件が起こった。
「うに丼か、いくら丼か」事件。
晩飯は北海道の名産を食べよう!と、「るるぶ」に載っていたお店に行き、
いろいろと注文していくなかで、彼女が選んだものに
「うに丼か、いくら丼か、お選びください」サービスがあった。
そんなに食べまくる女性ではないので、
そのサービス分は私が食べることになるんであろうと思い、
「うに丼にしいや!」と私。
「いやや、いくら丼がええ!」と妻。
「いや…、おまえ、絶対食べられへんって…」と、うに丼を強要する私。
「いくら丼のほうが美味しいって!」と、頑としていくら丼にしたい妻。
よ?し!わかった!いくら丼にしたらんかい!
北海道まで来て、うにといくらで喧嘩してもしゃあないわ!である。
しぶしぶ彼女の言う「いくら丼」を注文し、
「明日、どこ行こか?」とるるぶを広げ、ワインなんかも飲んだであろう、
時を忘れて美味しい食事を楽しんでいた。
そこへ「いくら丼、お待たせしました?」と店員さん。
「あっ、そうか!でも、お腹いっぱいや?!」とへらへら笑う妻。
ほれ、みてみ?、だから、言うたやないか?!である。
(つづく)
2008-08-27