秋刀魚の刺身(後編)。

ついに…秋刀魚の刺身が…。前回の続き。

国道らしき道路まで出たものの、案の定、走っている車といえば

ジャガイモやらを大量に積んだ大型トラックが通り過ぎるだけ。

このありえない状況に妻は怒る元気もなく、トボトボと私の後ろを歩く。

「ヤバイ!旅行どころか夫婦そのものが終わってしまう!」だ。

数十分ほど私一人だけがしゃべりながら歩いたであろうそのとき!

一台の車の窓ガラスに光り輝く赤い「空車」の文字が遠くに見える。

無人島に漂流し、海ばかりを眺める毎日を過ごす中で

一隻の船が遠くに見えた時の高鳴る気持ちを始めて知った。

大きく手を振り、「お?い!助けてくれ?!」である。

やっとホテルへ帰れる安堵感からか、妻に少しだけ笑顔が戻る。

ただ、完全ではない。

「不完全のまま今日を終わらしてはならない!」

そう考えた私はホテル到着後、夜遅くにも関わらず

「ちょっと飲みにいこや!」と誘った。

あたりを見渡すと、これまたうまいことちょうど一軒だけ

遠くのほうでぼんやりと赤提灯が灯っているが見える。

奇跡が奇跡を呼びよった。

昭和の匂いを残すママ一人の小さい飲み屋さん。

「ごめ?ん、ママ!まだいけます??」と私。

「いいわよ?。もう、何にもないけど…。あっ、ホッケがあるわ」とママ。

さすが、北海道!ホッケを常備しているとは…。

「こんな大きなホッケは本土には無いでしょ?」と自慢げなママ。

「スーパーの息子をなめてもらったら困りまっせ!」を飲み込む私。

楽しくいろいろな話をするなかで、新婚旅行での喧嘩の話も…。

気の毒に思ったのか、ママが自分で食べようと隠していた秋刀魚を

「刺身で食べたことある?」と、手馴れた包丁さばきで出してくれた。

「へ?、刺身で食べれますの?」

「鮮度がいいものはね。で、地元では一味醤油で食べるのよ!」

初めて口にするも、期待以上の味に驚かされる。

妻も「うわっ、美味しいですね?」と、ようやく完全なる笑顔が…。

「また喧嘩したら、秋刀魚の刺身を思い出たらいいのよ。

美味しいものを食べてこれからも仲良くね。オホホ…」とママ。

このように我々夫婦の危機的状況を救ってくれたのが

「秋刀魚の刺身」と「ファットママ」なのである。

息子よ、秋はなんやかんやいうても秋刀魚や。

今、自分があるのは秋刀魚のおかげやぞ。

ありがたく感謝して喰えよ。

2008-09-02

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  1. ヤッホー!もとちゃん…こんなのでも良いですか? より

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