猫になりたい。

ここ数か月、家に帰ってリビングのドアを開けると

ほぼ間違いなく彼女が待ってくれている。

ただ、私のためにしてるわけではなさそうで

「おかえり!」ともとれるニャーもなく

ドアの前にたたずみ、ジーっと私を見ているだけ。

ま、理由なんて何だっていい!癒しやわぁぁ…

「ただいまー」である。

もう、あれだ、猫がいない日常は考えられない。

なのに、飼い始めてまだ半年も経っていないという。

うそやろ、まだ4か月?存在感が凄いなぁ…

「そもそも、こいつの誕生日ってい…つ…」

そう言いだして、どえらいことに気づく。

妻の誕生日だ!

「あっ、そうや!た、誕生日、おめでとう!」

「あのなぁ、猫きっかけってなんやねん」

ぐうの音も出ない…。

次の日、反省の意味も込めてプレゼントを買ってくる。

彼女が大好きなチュール。

「なんでやねん!猫のやん」

「あのな、プレゼントってのは難しいやん。

なんで、難しいんかっていえば、多様性や、多様性。

これがええ!思ても、貰った方はいらんもんやったり。

だからって、お金を渡して好きなもんでも買い…つうのは

合理的やけど、なんか嫌やん、倫理観が働くというか…

で、俺とおまえが共通して大切にしてるもんは何や?」

「はぁ、家族とかちゃうん?」

「違う、猫や」

「アホか!」

「いや、家族って漠然として…、どっちも猫やん、大切なん。

で、俺の立場は会社の代表やし、“仕事”もめっちゃ大切。

その大切な仕事よりも、おまえの大切な猫を優先してやな」

「いや、あんたがチュールあげたいだけやろ!」

「なるほど、俺が大切にしてるもんのために

おまえの大切なもんを利用したら…確かに、それは偽善や。

さっきも言うたけど、俺がじゃなくて共に大切にしてんねん。

おまえの大切な猫の喜ぶ顔を見て喜ぶやろなに導かれて…

ほら、見てみぃ、この顔。アホほど喜んでるで」

「いやいや…、あんたがあげたいだけやって」

「うーん、ま、そうかもしれん。けどや、チュールを

与え過ぎたらアカンというルールをおまえが決めたなかで

ルールを破ってまでも与えてええんか…という葛藤もあり

家族のルール?いや、誕生日のお祝いやろ?が衝突し…て…

って、おいっ、ど、どこ行くねん!聞けやー」

屁理屈に耐え切れず、妻は二階へと姿を消した。

チュールひとつで反省、後悔、倫理、偽善、葛藤…など

人間にはさまざまな感情が生まれることを猫は知る由もない。

だって、食べ終わると遠慮なく容赦もなく私の前から姿を消す。

「ええなぁ、自由気ままで。おまえになりたいわ」

こんなにも生きづらい世の中にしたんは誰や?の問いに

他でもない 我々、人間やねんなぁ…なんて思い知らされる。

うーん、ま、なにわともあれ、妻よ、誕生日おめでとう。

2023/05/06

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  1. ヤッホー!もとちゃん…こんなのでも良いですか? より

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